

このページでは、「値引き交渉を見誤ったことで売却チャンスを逃す場合がある」ということを事前に知っておき、買主からの価格交渉対する捉え方についてまとめています。
初期段階で売値を決める際、不動産会社と相談した上で相場価格と同等かやや高めの価格設定をするのが一般的ですが、実際問題としてその設定価格で売れることの方が少ないのが現状です。
不動産会社でこれまで数え切れないほど売買契約に携わってきましたが、体感で約9割の取引で価格交渉が行われていると言っても過言ではありません。
買主の立場になって考えてみても、現在の価格より少しでも安く買いたいと思って値引き交渉をしてくるのが一般的。
この価格設定とそれに対する値引き交渉自体が、明確な基準値を基にして行われていないのが実情なわけです。
けれども、売りたいと思っている不動産は、売れなければ意味がありません。ここでは売却に失敗してしまう事例を元に考えてみましょう。
設定価格にこだわり過ぎたために失敗したよくあるケース
Aさんは自分の物件売却価格を3000万円に設定していました。それでもなかなか買い手が現れなかったのですが、ある日該当物件を見た買い手候補の方が「2500万円なら購入したい」と言って現れました。
しかし、Aさんはあくまでも初めに設定した価格にこだわり、
「3000万円でなければ売ることは出来ない」
と突っぱねました。
結局その買い手候補の方はその物件を諦めて、他の物件を購入。そのまま物件は売れ残り続け、Aさんは一旦売却を諦めました。
1年後にま私が務める会社にAさんが現れ、「あの物件を2500万円で売りたい」と申し出がありましたが、うちが出した査定金額は2200万円。
「残念ですがこれ以上の価格を付けても今では売れる確率は相当低いと思います。」
結局Aさんは泣く泣くその物件を2200万円で売却することになってしまいました。
「あの時売っていれば」では時すでに遅し、なんてケースは意外と多い
上記事例のように、不動産相場価格は日々変動しているために、少し前までは売れた値段でも、今では全く売れなくなった、ということはザラに発生します。
ましてや好景気なバブル時代ならまだしも、今は決して景気は良いとは言えない時代。人々の財布の紐は年々硬くなりつつあるわけですね。
不動産会社からしても、なんとか売ってあげたいと思っても、売主さんが「売らない!」と判断していれば、いくら買い手が現れても売ることは出来ません。
買い手が複数現れない限り、少ない売却チャンスを逃すことで結局損をして終わってしまうケースは意外と多くあるのです。
売却価格設定からどこまで価格交渉を許容するかは事前に決めておく
冒頭でもお伝えしたとおり、売り出された物件の90%は価格交渉されるものだと事前に理解しておくことはとても大切でしょう。
とはいえ、最初から速攻で買付が入る金額で設定する必要はなく、相場よりもやや高めに設定しておくことは問題ありません。

売却価格設定方法については下記を参照してみてください。
相場よりも大きくかけ離れた価格設定をしない限り、売り出してから1ヶ月、長くても3ヶ月待てば内見や買付の申込みは入るのが一般的。
もし一切の問い合わせがない場合はそもそも価格設定自体を間違えていると思っておいて良いでしょう。
問い合わせや内見などが入るかどうかを価格設定の一つの目安にし、その上で「どこまでなら価格交渉を許容するか?」は事前に決めておくことも大切。
この基準を決めておかないと、せっかくの売却チャンスを棒に振る事になりかねません。
どれくらいの価格帯で交渉されることが多いか?
どれくらい価格交渉されるかは、売却する価格帯によって大きく異なりますので一概に定型化できませんが、1000万円以下であれば100万円未満の価格帯、つまり80万円とか90万円の値引き交渉です。
これが1000万円単位の売却価格になると100万円+端数、8000万円以上1億円未満であれば500万円~1000万円くらいまで入る場合もあります。
もちろん500万円以下でも500万や1000万円単位で価格交渉が入るケースもあります。
これくらいの価格交渉になると、事前にどこまで許容しておくべきかを設定しておかないと売主としても面食らう事になってしまいますが、これらを踏まえて価格設定しておけば話は別。
事前に想定しておくのとしていないのとでは、それだけで売却チャンスを逃す逃さないに繋がるため、やはり事前の念入りな価格設定と許容交渉価格までは決めておいたほうが良いと言えます。
価格交渉されたときの条件設定まで踏まえておくとなお良い
例えば100万円までの価格交渉であれば即決する、もしそれ以上になった場合は売主側としても飼い主に対しての条件設定をしておくと良いでしょう。
具体的には、
- 現金一括払い
- 融資特約なし
- 支払期限
- 瑕疵担保責任免責
- 残置物は買主負担
- 境界線確定は買主負担
- 契約解除条件の設定
- 手付金の設定を上げる
などなど…
これらのハードルを価格交渉なしの場合と比較してキツめに設定することで、買主の本気度が計れますし、売主としても負担や責任が減るため価格交渉に応じやすくなります。
買主は売却理由も気にしながら交渉してきている
売主側だとなかなか気が付きにくいことですが、買主は売主の売却理由を気にしながら価格交渉を狙ってきているケースは少なくないです。
特に熟練の投資家や大家歴が長い経験豊富な買主の場合は、ほとんどの場合で売却理由をチェックしています。
一般的な売却理由として多いのが「資産整理」というフレーズでしょうか。
これはかなり無難でかつ汎用性が高い売却理由としてよく使われています。
もちろん嘘を付く必要はありませんが、あえて買主に付け入られやすい理由をあからさまに伝える必要が本当にあるかどうかは媒介契約に入っている不動産会社と事前に相談しておくのも大切です。
どんな売却理由が価格交渉されやすい?
実は買主側として価格交渉しやすい売却理由というのがあることはあまり知られていませんが、体験上確実にあると思っています。
例を挙げると、
- 相続したがもう使う予定がない
- 長年住んでいないのでもう必要がない
- 資金繰りが必要なため
- 固定資産税を払うのがキツイ
これらは賢い買主に価格交渉のスキを与える絶好の売却理由になりえます。
つまり「売主はもうこの物件が要らないんだな」「お金に困っているから価格交渉しても通しやすいな」などと考えているためです。
繰り返しになりますが、嘘を付く必要はありませんが、わざわざ価格交渉を買主に有利な状況になるようにあえて伝える必要はないとも言えます。
やはり「資産整理のため」や「売却後に買い替えたいため」「資金が溜まったのでもっと広いところに住み替える」などの理由が自然でかつ買主にも付け入りづらい理由になると個人的には考えています。

ちなみにライフルが行った「マンションや一戸建てを売却することになった理由ランキング」では下記のようになっています。
1位 より良い住まいに住み替えるため 42.3%
参考:https://www.homes.co.jp/cont/press/report/report_00059/
2位 資金が必要となったため 12.9%
3位 今が売り時だと考えたため(税制改正などから)9.4%
4位 勤め先の転勤のため 7.9%
5位 住まいを相続した/することになったため 7.5%
6位 離婚したため 6.0%
7位 家族(親や子どもなど)と同居するため 5.0%
8位 ご自身や子どもの通勤/通学のため 3.3%
9位 家族やご自身の子育て/出産のため 2.9%
10位 家族やご自身の介護のため 2.3%
以下番外
子どもが独立したため 1.5%
結婚したため 0.8%
その他 10.0%
高い買い物ほど買主も「購入理由」を探している
仮に融資を受けて売り物件を購入するとしても、金額が高くなるほど買主としても相当な勇気と覚悟を持って買付に望んでいるはずです。
つまり価格交渉とは別に「この物件を買うにあたり良い物件かどうかを知っておきたい」とも考えているわけです。これはほぼ確実です。
もちろん物件価格や諸々の条件は把握した上で「本当にこの物件を買っても大丈夫なのか?」をできれば誰かに後押ししてほしいと思っているのです。
その後押しになる材料として、売主の売却理由も大きな要因になっているのは間違いないでしょう。
- 本当にこの物件を大切にされてきたんだな
- 思い入れのある大切な住まいだったんだな
- 本当は売りたくないけどやむなく手放すんだな
こんな思いを感じさせるような売却理由であるほど、買主は「この物件なら買っても大丈夫そうだ」と思ってくれやすくなるもの。
問題がある物件は買い手側としても嫌なもの。少しでも欲しいと思っているから売却理由が気になるわけです。
こんなごく自然な気配りでも、不動産が売れたり売れなかったりという理由にもなったりするんですね。
まとめ
値引き交渉をされて気持ちのよい売主さんはいないでしょう。
けれどもそれに応じなかったがために結局機会ロスをしてしまっては意味がありません。都度しっかりと不動産会社との相談を重ねつつ、現況を正確に把握しながら柔軟な売却姿勢も求められます。
売却理由も含めて買主に配慮できていれば、よりスムーズに、そして気持ちの良い売却を達成しやすくなるでしょう。
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